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働く婦人の結婚と恋愛
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九三二年三月〕
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 ソヴェト・ロシアでは、結婚にしても離婚にしてもとても自由です。自由と云っても、ブルジョア的な自由ではない。子供に対しては、勿論、お互に責任を持たねばなりません。

 私たちの結婚は、結婚とか、恋愛とか、そう云うものを、単にそう云うものとして、私たちの生活から切り離して考えるのではなく、結婚も恋愛も、私たちの生活の、仕事の一部分として、仕事によって結ばれるのでなければなりません。お互いの階級的立場――相手がどういう立場にあるか、自分たちの階級のために働いてゆく人であるかどうか、是は、勿論、基礎的な問題です。従って、私たちの恋愛も結婚も、それぞれの仕事を中心として、同じ仕事をやっている人たちの間に、仕事を通じて結ばれます。
 こう云う事が考えられます。結婚当時、同じ政治的な意見を持っていた人たちでも、結婚後、政治的に意見がちがって来る場合があります。そんな場合、私たちは、自分だけが進んだからと云って、すぐに分れてしまうのではなく、お互に勉強し、高めあってゆかねばならないと思います。それは個人的な愛情の問題ではなくむしろ、階級的な任務の問題です。そしてその上でどうしてもお互の政治的な意見がちがう場合、その時、初めて私たちは分れなければならないのです。
[#地付き]〔一九三二年三月〕



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
初出:「文学新聞」日本プロレタリア作家同盟機関紙
   1932(昭和7)年3月10日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
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