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嫁入前の現代女性に是非読んで貰いたい書籍
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九二四年五月〕
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 常識を働かせ、実際的な立場から考えると、性、育児教育等に関するよい書物も必要でしょう。私には一々指名出来ません。心の上から行くと頭に浮ぶだけでも、夏目漱石の「行人」「それから」「門」ツルゲーネフの「その前夜」「処女地」ロマンローランの「ジャン・クリストフ」名を一寸思い出せませんが、同じ人が女性を主人公として描いた最近の長篇。ガルスワージーの“saint's progress”バッチンスの“this freedom”その他、深く読むべきものが多いと思います。ゲーテの「親和力」アンリー・ファブルの昆虫記のようなものもよい本です。
 質問外のことですが、此等を書きながら私の心に起ったことを言わせて下さい。結婚が最も冒険であり一大事であるのは、運命的な要点が(其人等によって)他人の書いたどの本にも載っていないという事です。
[#地付き]〔一九二四年五月〕



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
初出:「女性改造」
   1924(大正13)年5月号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
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